離職票へ記載する通勤手当の計算方法とは?月割りと端数処理のポイント

離職票(離職証明書)とは企業が退職した従業員に交付する書類の一つです。退職した従業員は離職票をハローワークに提出することで失業保険(失業手当)を受給することができます。

企業側には離職票作成時に従業員への支払い賃金を記載する必要があり、その際には基本給や残業代だけではなく、通勤手当も含めて算出することが求められます。


本記事では、離職票の作成時における通勤手当の具体的な計算方法や、注意すべきポイントについて詳しく解説します。


目次[非表示]

  1. 1.離職票(離職証明書)の賃金には通勤手当が含まれる
  2. 2.通勤手当を支給している場合の離職票(離職証明書)への記載方法
    1. 2.1.一括で定期代を支給している場合
    2. 2.2.定期代を精算した場合
    3. 2.3.通勤手当を翌月に支給している場合
  3. 3.離職票(離職証明書)の通勤手当計算の具体例
    1. 3.1.通勤定期代の精算がない場合の具体例
    2. 3.2.通勤定期代を精算した場合の具体例
  4. 4.まとめ


離職票(離職証明書)の賃金には通勤手当が含まれる

離職票(離職証明書)には、退職者に毎月の支給していた賃金額を記載する必要があります。離職票に記載する対象の賃金は「事業主が労働の対償として支払ったもの」とされており、通勤手当もその一つとされています。そのため、離職票の賃金には通勤手当を含めて計算し、記載しなければなりません。


離職票に記載する通勤手当は、課税・非課税の区別にかかわらず、全額賃金に含めて計算する必要があります。

また、実費支給している場合でも通勤手当として支払っている賃金は、原則として離職票の賃金に含めて計算しなければなりません。


このように、離職票に記載する賃金の計算には、通勤手当の取り扱いに十分注意しながら作成することが求められます。


通勤手当を支給している場合の離職票(離職証明書)への記載方法

離職票(離職証明書)の賃金額は「その期間の実労働分」の賃金を記載しなければなりません。そのため、通勤手当の支給方法によっては実際に支給した給与の金額と異なる場合があります。


ここでは、以下の3つの事例をもとに離職票の通勤手当の記載方法を紹介します。

  • 一括で定期代を支給している場合
  • 定期代を精算した場合
  • 通勤手当を翌月に支給している場合


一括で定期代を支給している場合

通勤手当を定期代として特定の月に一括で支給している場合は、月割りする必要があります。たとえば、6ヶ月分の定期代を支給している場合は、その金額を6で割り、各月の給与額に均等に加算して計算するということです。

また、定期代を月割りした場合、端数が発生することがあります。端数が発生した場合は、端数を最終月に計上する形で処理をしなければなりません。


たとえば、4月から9月分の6ヶ月定期代として50,000円を4月に支給した場合、50,000円を6で割ると「8,333...円」となり、端数が発生します。この際、4月から8月はそれぞれ8,333円を計上し、9月は端数を含めた8,335円を計上して賃金を計算する必要があります。


なお、3月の給与で4月から9月分の定期代を支給している場合は、月割りした通勤手当を4月から9月の賃金に加算して賃金を計算する方法が一般的です。具体的な計算方法はハローワークに確認して記載しましょう。

参考:愛知ハローワーク「離職証明書の書き方~初めての方向け~


定期代を精算した場合

従業員が退職した際に、前払いしていた定期代を精算する場合があります。退職時に通勤手当の精算が発生した場合は、支給済みの定期代から払戻金額を引き、在籍期間で月割りして計算します。なお、払戻手数料を会社負担にするか従業員負担にするかは会社の任意です。トラブル防止のためにも、払戻手数料の負担については就業規則や賃金規程などの社内規程に定めることが望ましいでしょう。


例)

  • 8月31日退職
  • 通勤定期代70,000円を4月に支給(4月~9月分)
  • 精算額は -12,000円
  • 70,000円 - 12,000円 = 58,000円
  • 58,000円 ÷ 5 = 11,600円


上記の例の場合は、4月~8月の賃金に各月11,600円を加算して離職票の賃金を記載する必要があります。

参考:東京ハローワーク「被保険者に関するQ&A


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通勤手当を翌月に支給している場合

離職票は「その期間の実労働分」の賃金を記載する必要があるため、当月締め当月支給の会社では、翌月に支給された手当を当月分として遡及して計算する必要があります。


たとえば、4月分の通勤交通費の実費分を5月の給与で支払っている場合、離職票に記載する際には、通勤手当を前月である4月に割り戻して計算する必要があるということです。当月締め当月支給で通勤手当が翌月払いとなっている企業は注意しましょう。

参考:厚生労働省「雇用保険事務手続きの手引き


離職票(離職証明書)の通勤手当計算の具体例

実際に離職票(離職証明書)を作成する際は、どのように通勤手当を計算するのでしょうか。具体的な事例を2つ挙げて紹介します。


通勤定期代の精算がない場合の具体例

例)

  • 6月30日退職
  • 毎月15日締め・当月25日支給
  • 通勤定期代は20,000円(3ヶ月分を前払い)


給与締日
1/15
2/15
3/15
4/15
5/15
6/15
7/15
支給日
1/25
2/25
3/25
4/25
5/25
6/25
7/25
基本給
300,000

300,000

300,000

300,000

300,000

300,000


通勤手当


20,000




通勤手当
月割り
(6,666)

(6,666)

(6,666)

(6,666)

(6,666)

(6,668)


離職票
記載金額

306,666

306,666

306,666

306,666

306,666

306,668

未計算


毎月300,000円の基本給と3ヶ月に1回定期代が支給されているケースです。通勤手当が前払いであるため、12月に1月~3月分、3月に4月~6月分を支給しています。


6月30日に退職したため、通勤手当の精算はありません。ただし、通勤手当は月割りするため、各月「20,000円÷3ヶ月」の賃金を離職票に記載します。また、3ヶ月目は端数を計上するため、3月と6月の月割り額は他の月と異なる金額となります。


通勤定期代を精算した場合の具体例

例)

  • 6月30日退職
  • 毎月末日締め・当月25日支給
  • 通勤定期代は80,000円(6ヶ月分を前払い)
  • 精算額は -38,000円
  • 80,000円 - 38,000円 = 42,000円
  • 42,000円 ÷ 3ヶ月 = 14,000


給与締日
1/31
2/28
3/31
4/30
5/31
6/30
支給日
1/25
2/25
3/25
4/25
5/25
6/25
基本給
300,000
300,000
300,000
300,000
300,000
300,000
通勤手当


80,000


-38,000
通勤手当
月割り
(13,333)
(13,333)

(13,335)

(14,000)
(14,000)
(14,000)
離職票
記載金額
313,333
313,333
313,335
314,000
314,000
314,000


毎月300,000円の基本給と3月・9月に6ヶ月分(4月~9月分・10月~3月分)の定期代が支給されており、通勤手当の払戻分を精算するケースです。


4月~6月分は6ヶ月分定期代から精算額を引いた額を在籍月数で割って通勤手当の月割りを算出して計上します。1月~3月は精算が発生していないため、「80,000円÷6ヶ月」で計算した賃金を計上して計算します。


まとめ

離職票(離職証明書)を作成する際は、通勤手当の月割りや割り戻し、精算の有無などに注意して賃金額を計算する必要があります。離職票の賃金額は退職者の失業保険(失業手当)の受給金額に影響する重要な項目です。本記事を参考に正しく計算し、離職票を作成しましょう。


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