通勤手当の変更で社会保険料が変わる?随時改定(月額変更届)の判断基準と注意点を解説

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通勤手当の変更によって、社会保険料が変わる可能性があることをご存じですか?

給与に大きな変動があった場合は、社会保険の標準報酬月額を見直す「随時改定(月額変更届)」の対象となることがあります。

通勤手当は固定的賃金に該当し、ルート変更や運賃改定などで増減があると、一定の条件を満たせば社会保険料が変更されることがあります。


本記事では、通勤手当の変更が随時改定の対象となるケースや、対象外となるケース、手続きの注意点について詳しく解説します。


目次[非表示]

  1. 1.随時改定(月額変更届)とは
  2. 2.通勤手当が増減すると随時改定(月額変更届)の対象になる
  3. 3.通勤手当の変更で随時改定(月額変更届)になるケース
    1. 3.1.通勤ルートの変更や通勤手段による手当の増減
    2. 3.2.運賃改定・ガソリン単価による変動
  4. 4.通勤手当の変更で随時改定(月額変更届)にならないケース
    1. 4.1.標準報酬月額の等級の変動が1等級
    2. 4.2.出勤日数の変動による金額の変動
  5. 5.通勤手当の変更による随時改定(月額変更届)の注意点
    1. 5.1.定期代払戻による精算額は報酬に含めない
    2. 5.2.通勤手当の遡及支給は本来の変動が発生した月を変動月とする
  6. 6.まとめ


随時改定(月額変更届)とは

随時改定(月額変更届)とは、社会保険の標準報酬月額を変更する手続きの一つで、給与に大きな変動があった場合に適用されます。通常、標準報酬月額は年に1回の定時決定によって見直されますが、随時改定を行うことで定時決定を待たずに社会保険料を適正な額に修正できます。

随時改定(月額変更届)は、以下3つの条件をすべて満たした場合に適用されます。


1.固定的賃金が変動したこと​​​​​​​

基本給の変更や手当の増減など、稼働実績に関係なく支給される賃金(固定的賃金)が変動した場合が対象となります。


2.変動月から連続3ヶ月間の支払基礎日数が一定以上であること

正社員やフルタイムの場合、各月の支払基礎日数が 17日以上であることが必要です。


3.変動月から3ヶ月間の平均報酬と、現在の標準報酬月額に2等級以上の差があること

3ヶ月間の平均給与をもとに算出した標準報酬月額と、現在の標準報酬月額を比較し、2等級以上の差がある必要があります。


上記の条件を満たした場合、固定的賃金が変動した月から4ヶ月目に標準報酬月額が変更され、新しい保険料が適用されます。

例えば、1月に基本給が変更された場合、1月・2月・3月の給与額をもとに、要件を満たしていれば4月から新しい標準報酬月額が適用されるということです。

参考:日本年金機構「随時改定(月額変更届)



通勤手当が増減すると随時改定(月額変更届)の対象になる

通勤手当は、随時改定(月額変更届)の対象となる「固定的賃金」に該当します。

そのため、通勤手当が増減した場合は、その変更があった月が「変動月」となり、随時改定の要件の一つである「固定的賃金の変動」に該当します。

企業の担当者は、従業員の通勤手当に変更があった際には、以下の流れで随時改定が適用されるかの確認が必要です。


  1. 通勤手当が変更された月を変動月とする
  2. 変動月から3ヶ月間の給与を確認する
  3. 標準報酬月額の2等級以上の増減を確認する


すべての要件が満たされていれば変動月から4ヶ月目に月額変更届を作成し、日本年金機構に届け出ます。

なお、定期代をまとめて3ヶ月または6ヶ月単位でまとめて支給している場合は、1ヶ月あたりの額を算出した額を各月の報酬とします。

参考:日本年金機構「算定基礎届の記入・提出ガイドブック


通勤手当の変更で随時改定(月額変更届)になるケース

通勤手当が随時改定の対象となるかどうかは、単価の変動があるかないかによります。

例えば、通勤ルートの変更や公共交通機関の運賃改定、ガソリン単価の変動など、単価の変更によって支給額が増減する場合は対象となる可能性があります。

ここでは、ケースごとに随時改定(月額変更届)の対象となる具体例を紹介します。


通勤ルートの変更や通勤手段による手当の増減

従業員の住所変更や、最適な経路の見直しによって通勤ルートが変更されると、通勤手当の金額が増減することがあります。また、通勤手段を電車から自動車へ変更したり、バスから電車に変更したりする場合も、通勤手当の金額が増減することから随時改定の対象となるかの確認が必要です。

通勤ルートや通勤手段の変更によって従来の通勤手当と新しい通勤手当で差額が生じた場合、その増減額は固定的賃金の変動に該当します。変動があった月から3ヶ月間の給与を確認し、標準報酬月額が2等級以上増減するかを確認するようにしましょう。


運賃改定・ガソリン単価による変動

通勤ルートの変更がなくても、公共交通機関の運賃改定によって通勤手当が増減する場合は、随時改定の対象となります。

運賃改定による変動があった場合の変動月は、改定後の通勤手当が初めて支給された月です。

たとえば、4月に運賃改定が行われた場合でも、改定後の通勤手当が9月に支給された場合は、9月・10月・11月の給与をもとに標準報酬月額の変動を判断することになります。

また、自動車通勤者に対してガソリン単価を設定して通勤手当を計算している場合は、ガソリン単価の変動が固定的賃金の変動となるため、ガソリン単価変更後の通勤手当を支給した月が変動月となります。

参考:日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集 問13


通勤手当の変更で随時改定(月額変更届)にならないケース

通勤手当が増減しても、すべてのケースで随時改定(月額変更届)の対象となるわけではありません。以下のようなケースでは、通勤手当の変更があっても標準報酬月額の改定は行われないので注意しましょう。


標準報酬月額の等級の変動が1等級

通勤手当の変更があった場合でも3ヶ月の平均賃金が現在の標準報酬月額と比べて1等級の変動であれば随時改定は行われません。

随時改定は「変動月から3ヶ月の平均賃金と標準報酬月額に2等級以上の差がある」ことが条件であるため、たとえ通勤手当の変動があったとしても、この条件を満たしていなければ随時改定の対象とならないということです。


出勤日数の変動による金額の変動

通勤手当が出勤日数によって支給額が変動している場合は、固定的賃金の変動に該当しません。

たとえば、自動車通勤の従業員に対して「ガソリン代(距離×2×ガソリン単価 ÷ 燃費) × 出勤日数」で計算して通勤手当を支給している場合は、出勤日数のみでは固定的賃金の変動に該当しないということです。ただし、ガソリン単価が変更になった場合は固定的賃金の変動に該当するため、随時改定の対象となります。

つまり、通勤実績(出勤日数)の変動に伴う支給額の変動については、固定的賃金の変更とはみなされず、随時改定の対象外となります。

参考:日本年金機構「事業所調査における誤りの多い事例


通勤手当の変更による随時改定(月額変更届)の注意点

通勤手当が変更されると、随時改定(月額変更届)の対象となる場合がありますが、計算方法や変動月の考え方に注意する必要があります。実務担当者は従業員の給与に直結する事項ですので、必ず押さえておきましょう。


定期代払戻による精算額は報酬に含めない

通勤定期代を3ヶ月分や6ヶ月分などまとめて前払いしている会社では、住所変更などによって通勤ルートが変更になった際、定期代払戻による精算が給与によって行われる場合があります。

通勤手当の払戻精算については、あくまで前払いした分の精算であり、通勤手当を支給したわけではありません。

そのため、払戻精算分として支払った通勤手当は随時改定の報酬に含めないで計算する必要があります。


通勤手当の遡及支給は本来の変動が発生した月を変動月とする

通勤手当の変更は、一般的に従業員の申請によって手続きが進められます。

しかし実務では、従業員の申請が遅れて会社側が遡及して通勤手当を支給する場合があるでしょう。その場合、本来変動が生じるはずだった月を変動月として随時改定を算定する必要があります。

たとえば、7月に住所変更をした従業員が9月に申請をした場合は、7月・8月・9月で随時改定に該当するか確認するということです。

また、企業の担当者が給与計算時に通勤手当の変更が漏れたために遡及して支給した場合も、本来変動が生じるはずだった月を変動月として随時改定を算定する必要があります。

参考:日本年金機構「社会保険事務のポイント 事例5


まとめ

通勤手当は社会保険の算定において「固定的賃金」に該当するため、随時改定(月額変更届)によって社会保険の標準報酬月額が見直される場合があります。

通勤ルートの変更や通勤手段の変更、運賃改定などで手当が増減した際は、随時改定(月額変更届)の対象となる可能性があるため、企業の担当者は適用要件を正しく確認することが大切です。

通勤手当の管理は、従業員の申請状況や運賃改定などを適切に把握する必要があり、手作業では負担が大きくなります。「駅すぱあと 通勤費Web」 を活用すれば、通勤手当の申請・変更管理を効率化でき、業務負担の軽減につながります。社会保険料の適正な管理とスムーズな業務運用のために、ぜひ導入をご検討ください。


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