通勤費をエクセルで管理することはできる? その方法と注意点を解説
従業員の通勤費の管理を、手計算で行っている企業さまもいるのではないでしょうか。費用をかけずに、管理にかかる工数を減らしたいのであれば、表計算ソフトであるMicrosoft Excel(以下、エクセル)を用いるのが有効です。
そこで本記事では、通勤費の管理にエクセルの利用を検討されている企業さまへ、具体的な方法と、起こり得るリスクを解説します。
目次[非表示]
- 1.1.通勤費をエクセルで管理する方法
- 1.1.➀社内で一から作成する
- 1.2.②テンプレートを活用する
- 2.2.通勤費の管理業務の流れ
- 2.1.①ガイドラインの策定
- 2.2.②従業員へのコミュニケーション
- 2.3.③通勤費の計算
- 2.4.④経費申請と承認プロセスの実施
- 2.5.⑤支払いと記録の管理
- 2.6.⑥監査と法令遵守
- 2.7.⑦改善と効率化
- 3.3.通勤費をエクセルで管理する場合のリスク
- 4.4.通勤費の管理業務における課題
- 4.1.課題①通勤経路の妥当性の確認
- 4.2.課題②運賃改定への対応
- 5.5.通勤費を楽に管理するならシステムの利用がおすすめ
- 6.まとめ
1.通勤費をエクセルで管理する方法
通勤費を管理するには、さまざまな方法がありますが、そのなかの一つがエクセルを用いる方法です。日々の業務でも使用頻度の高いソフトであるエクセルですが、通勤費の管理はどのように始めたらよいのでしょうか。
ここでは、エクセルで通勤費を管理する際の、2種類の始め方を紹介します。
➀社内で一から作成する
まず、エクセルを活用する際には、従業員が一から作成する方法が挙げられます。
自由度が高く、自社にとって使いやすいかたちにカスタマイズできるのが大きな利点です。
一方で、シートの作成に時間がかかる場合は、運用開始までにかなりの時間を要します。仕様を間違えていると、正しく計算できずに通勤費の支給に過不足が生じるリスクもあります。とはいえ、自社にとって使い勝手の良いフォーマットを作成すれば、そのようなリスクの回避にもつながるはずです。
エクセルで通勤費を管理するためのフォーマットを作成する場合、エクセルの知識に長けている従業員が社内にいることが望ましいです。
②テンプレートを活用する
エクセルを使って通勤費を管理するとはいっても、社内にエクセルの知見がある従業員がいないケースが考えられます。そのようなときは、既存のテンプレートを活用するのがおすすめです。
テンプレートには、管理に必要な項目や数式がすべて入力されています。そのため、社内で一から作成する方法よりも、短時間、かつ仕様のミスがない状態で使い始められます。
インターネット上には、無料のテンプレートが複数公開されているため、自社に合う仕様を選べるのもうれしいポイントです。既存のテンプレートを改良して、自社で使いやすいようにブラッシュアップすることも可能です。
2.通勤費の管理業務の流れ
通勤費の管理は、企業において重要な業務の一つです。適切な管理を継続的に行うためには、エクセルのフォーマットを作成して終わりにするのではなく、大まかな流れを押さえておくことが不可欠です。
ここでは、通勤費の管理業務の流れを解説します。
①ガイドラインの策定
まず、通勤費に関するルールを明確にするため、自社でのガイドラインを策定します。
ガイドラインの例としては、“従業員は通勤経路や交通手段を明確に会社に申請する”“申請された通勤費が妥当かどうかを会社が判断し、適切だと判断した場合は支給する”などが挙げられます。このようなルールを設けることで、すべての従業員に平等な条件のもと、通勤費を支払えるというわけです。
原則として、企業には通勤費を支給する法的な義務はないため、支給方法や上限額は、自由に設定することができます。そのため、適切なガイドラインを策定し、それに則って運営すれば、従業員の安心にもつながります。
②従業員へのコミュニケーション
ガイドラインを定めたら、従業員にその内容を共有します。その際、労務担当者には、従業員にどのような規定なのかを明確に説明することが求められます。あとからトラブルが発生しないよう、従業員が抱える不明点は、この段階で解消しておきたいところです。
従業員にとって、通勤費の支給は働くうえで大事な要素ですから、きちんと説明することで、信頼と理解を得られるはずです。
③通勤費の計算
通勤費を管理するうえで、従業員からの情報収集は欠かせません。なぜなら、通勤経路や距離、1ヶ月の出社日数などの情報をもとに、支給する通勤費を算出するからです。
ただし、労務担当者は、従業員から提出された情報を鵜呑みにするのではなく、通勤経路が妥当かどうかを調査する必要があります。従業員一人ひとりの経路を調べて、ガイドラインに即しているのかを確かめなければならないためです。
また、支給する通勤費が課税対象になるのかどうかも、確認しておきたいところです。
④経費申請と承認プロセスの実施
従業員から通勤費の申請を受け取ったら、ガイドラインに基づいて、適宜承認します。
必要な書類を提出してもらい、労務担当者が厳正に審査したのち、給与と合わせて通勤費を支給するのが一般的です。不正受給防止のため、もし定期券面のコピーや領収書の提出を求める場合は、あらかじめ従業員に通知しておくことをおすすめします。
⑤支払いと記録の管理
労務担当者は、従業員に支給した通勤費の記録を、社内で保管します。
企業には、従業員の勤務時間を記載した“出勤簿”や、支払った賃金の詳細を記載した“賃金台帳”の記録と管理が義務付けられています。内容が不十分な場合、罰則の対象となるかもしれません。
通勤費は、労働基準法で“賃金に含まれる”と定められているため、労務担当者には、賃金台帳への正確な記載と、厳重な管理が求められます。
⑥監査と法令遵守
適正かつ公平に通勤費を支給するためには、定期的な監査も重要です。
監査を続けることで、通勤費の不正受給を防げるかもしれません。従業員の生活環境の変化によって、通勤費の支給基準を満たさなくなったにもかかわらず、数年にわたって不正に受給するケースが稀にあります。このような事態を避けるためにも、領収書や定期券のコピーの提出を義務化しておけば、監査の際に役立つはずです。
通勤費の支出が、法令や、自社で定めたガイドラインに反していないかを確認し、適正な運営を心がけることが大切です。
⑦改善と効率化
効率的に通勤費を管理するためには、運営するなかで起こったトラブルや、不具合などを改めて見直して、改善点を明らかにすることが欠かせません。その際、労務担当者の意見だけではなく、従業員にもヒアリングすれば、合理的に通勤費の管理業務をブラッシュアップできます。
3.通勤費をエクセルで管理する場合のリスク
通勤費の管理にエクセルを利用することで、手計算よりも業務の効率化を図れるというメリットがある一方、リスクも存在します。
以下で紹介する2つのリスクを押さえたうえで、自社に適切な方法をご検討ください。
➀人為的ミスやトラブルが発生する
エクセルでの数値の管理は、自動で計算が行われるため手間が少ない反面、エクセルを使い慣れていない従業員による、人為的ミスが発生するかもしれません。また、不具合によって、ファイルそのものが破損する可能性も考えられます。定期的にバックアップをとっていなければ、通勤費の算出に時間がかかり、給与の遅配につながるおそれもあります。
メリットだけを考えるのではなく、これらのトラブルを未然に防ぐ取り組みも重要です。
②法改正に合わせたアップデートが必要になる
エクセルで通勤費を管理する場合には、法改正にも気を配らなければなりません。
法改正により、通勤費の非課税限度額が変動する場合があります。その際には、エクセル内の関数や数式の修正が不可欠です。法改正に気づかずにフォーマットがアップデートできていなければ、給与計算やコンプライアンスに問題が発生するリスクが高まります。
法改正に関わる情報を完璧に理解できる従業員がいない場合は、別の方法を探したほうがよいかもしれません。
4.通勤費の管理業務における課題
通勤費をエクセルで管理する場合、どうしても手入力や目視での確認が必要です。その際、以下で紹介するような課題が浮き彫りになります。
課題①通勤経路の妥当性の確認
通勤費をエクセルで管理する際の課題の一つとして、従業員の通勤経路の妥当性を確認する作業に、リソースと時間を割く必要があることが挙げられます。労務担当者には、従業員から申請された内容が、“最も経済的かつ合理的な経路”になっているのかを、逐一判断することが求められます。
通勤費の管理において、エクセルを利用すれば、ある程度の工数を減らせます。ですが、通勤経路の妥当性までは確認できないため、最終的には人の目で見極めなければならないわけです。
課題②運賃改定への対応
各鉄道会社やバス会社の運賃が改定されたら、すべての従業員の通勤費に関する情報を更新しなければなりません。正確な通勤費を支給するためには必要な作業ですが、これらをエクセルに手入力していくだけでもかなりの時間を要するはずです。
とはいえ、従業員に安心して働いてもらうには、このような課題にも向き合っていかなければなりません。
5.通勤費を楽に管理するならシステムの利用がおすすめ
手計算での通勤費の管理と比べると、エクセルを用いるほうが効率的です。しかし、エクセルでも、結局人的リソースを割く必要があり、コア業務に集中できないという根本の問題までは解決しきれません。
そのようなとき、通勤費を計算できるツールや、通勤費管理業務に特化したシステムを利用することで、労務担当者を煩雑な業務から解放できます。システムによっては、自社で設定した通勤費の支給規定をあらかじめ設定することも可能です。従業員が申請した内容が規定に即しているのかを自動で判定してくれるため、従来のように、手作業で申請内容を確認したり、社内規定を調べ直したりする手間がなくなります。
また、各鉄道会社の運賃改定にも対応しており、システムが自動的に対象者の通勤費を更新します。これによって、運賃改定後の確認作業や、通勤費を再計算する手間が省けるわけです。
通勤費を効率よく管理したいのであれば、エクセルの利用とあわせて、通勤費管理業務を楽にしてくれるサービスの利用を検討することを推奨します。
まとめ
この記事では、通勤費をエクセルで管理する方法について以下を解説しました。
- 通勤費をエクセルで管理する方法
- 通勤費の管理業務の流れ
- 通勤費をエクセルで管理する場合のリスク
- 通勤費の管理業務における課題
- 通勤費を楽に管理するならシステムの利用がおすすめ
エクセルを用いて従業員の通勤費を管理する場合、一から自社で作成する方法と、既存のテンプレートを使う方法があります。手間なく、短時間で始めたい場合は、テンプレートを活用する方法をおすすめします。
手作業よりも管理が楽になるエクセルですが、より効率化を目指すのであれば、専用ツールの導入も視野に入れてみてください。通勤費はもちろん、給与や勤怠なども一元管理できます。
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