通勤手当の課税ルールや非課税限度額を注意点とともに解説

従業員に通勤手当を支給する際、課税・非課税どちらで処理するか迷われる方も多いのではないでしょうか。

通勤手当には法律で定められた「非課税限度額」があり、支給額がその範囲内であれば所得税はかかりません。また、通勤手段によって非課税限度額が異なるほか、近年では法改正によって非課税限度額の範囲が拡充されています。

本記事では、通勤手当の課税・非課税の基本ルールから非課税限度額の具体的な内容、実務上の注意点まで分かりやすく解説します。

目次[非表示]

  1. 1.通勤手当は課税・非課税どっち?
    1. 1.1.そもそも課税・非課税とは?
    2. 1.2.通勤手当の金額が非課税限度額以内であれば全額非課税
    3. 1.3.通勤手当の金額が非課税限度額を超えれば、その超えた額は課税
  2. 2.通勤手当の非課税限度額は?
    1. 2.1.公共交通機関で通勤する場合の非課税限度額
    2. 2.2.車・バイク・自転車で通勤する場合の非課税限度額
    3. 2.3.公共交通機関と、車・バイク・自転車を併用する場合の非課税限度額
  3. 3.通勤手当の課税・非課税における注意点
    1. 3.1.通勤手当の課税と非課税を間違えないようにする
    2. 3.2.通勤手当を課税で支給したときは年末調整で所得に含める
    3. 3.3.社会保険料の計算には通勤手当の全額が含まれる
  4. 4.通勤手当の課税・非課税に関するよくある質問
    1. 4.1.在宅勤務者に一律で通勤手当を支給している場合も全額が非課税になりますか?
    2. 4.2.通勤でグリーン車を利用した場合の「グリーン料金」は非課税枠に含まれますか?
    3. 4.3.6ヶ月定期券を半年に1回まとめて支給している場合、非課税限度額の判定はどのように行いますか?
    4. 4.4.出勤日数に応じて通勤手当を支給する場合でも非課税のルールは同じですか?
  5. 5.まとめ:正確な課税・非課税の判断と業務効率化にはシステム活用がおすすめ

通勤手当は課税・非課税どっち?

通勤手当は「一定の金額まで非課税、超えた分は課税」という仕組みになっています。仕組みを理解していないと、所得税の計算を誤ってしまうリスクがあるため、給与計算の担当者は課税・非課税のルールを押さえておく必要があります。

そもそも課税・非課税とは?

そもそも課税・非課税とは、もらったお金(所得)に対して税金が課されるかどうかという意味です。

「課税」とは所得税などの税金が発生する所得を、「非課税」とは税金が発生しない所得をいいます。給与や賞与は原則として課税所得として扱われますが、法律で特別に定められた一部の手当や給付については、非課税とされています。「通勤手当」もその一つで、法律上、一定の要件を満たす範囲内では非課税となります。

通勤手当の金額が非課税限度額以内であれば全額非課税

通勤手当には、法律上「非課税限度額」が設けられており、支給額が非課税限度額の範囲内であれば所得税はかかりません。

例えば、公共交通機関を利用して通勤する場合は、非課税限度額は月額15万円です。(2026年4月時点)

もし、電車・バスを利用する従業員に対して月額10万円の通勤手当を支給した場合は15万円の上限を超えていないため、全額である10万円が非課税扱いとなります。

なお、通勤手当の非課税限度額は電車・バスなどの「公共交通機関」と車・バイク・自転車などの「交通用具」を利用している場合で異なります。詳しくは後ほど解説します。

通勤手当の金額が非課税限度額を超えれば、その超えた額は課税

通勤手当が非課税限度額を超えた場合、超過した部分は給与所得として課税対象になります。

例えば、公共交通機関を利用している従業員に月額16万円の通勤手当を支給している場合、非課税限度額の15万円を超える1万円分が課税所得に加算され、所得税の計算対象となります。給与計算で所得税を計算する際には、通勤手当全額をそのまま非課税として処理しないよう注意が必要です。

また、非課税限度額は法改正によって変更されることがあるため、最新の国税庁の通達や情報を定期的に確認する習慣も大切です。

通勤手当の非課税限度額は?

非課税限度額を超えた分は課税所得として扱われるため、従業員ごとの通勤方法と支給額を把握することが求められます。

ここでは、通勤手段別に非課税限度額の具体的な内容を解説します。

公共交通機関で通勤する場合の非課税限度額

電車やバスなどの公共交通機関を利用している場合の通勤手当の非課税限度額は「月額15万円」です。これは「最も経済的かつ合理的な経路・方法」で通勤した場合の実費相当額が対象となります。

一方で、会社の規定として実費以上の手当を定額で支給している場合など、通常の通勤手当より多く支給している場合は、実費相当額を超えた部分が課税対象となる可能性があります。

従業員から通勤手当の申請があった場合は、定期券の金額や経路が適切か確認したうえで、金額を確定させましょう。

車・バイク・自転車で通勤する場合の非課税限度額

車やバイク、自転車などで通勤する従業員の場合は、非課税限度額は通勤距離(片道)に応じて段階的に設定されています。

従業員から通勤距離を申告してもらい、その距離に対応する限度額と実際の支給額を照らし合わせて正確に処理することが必要です。

なお、2026年4月から法改正により非課税限度額が拡充されました。2026年4月時点の非課税限度額は以下のとおりです。

通勤距離(片道)
1ヶ月あたりの限度額
2km未満
全額課税
2km以上 10km未満
4,200円

10km以上 15km未満

7,300円

15km以上 25km未満

13,500円

25km以上 35km未満

19,700円

35km以上 45km未満

25,900円

45km以上 55km未満

32,300円

55km以上 65km未満

38,700円

65km以上 75km未満

45,700円

75km以上 85km未満

52,700円

85km以上 95km未満

59,600円

95km以上

66,400円

※一定の要件を満たす駐車場等を利用し、その料金を負担している場合は上記の金額と1ヶ月当たりの駐車場等の料金相当額(上限5,000円)との合計が非課税限度額となります。(通勤距離が片道2キロメートル未満である人を除く)
参照元:国税庁『No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当

公共交通機関と、車・バイク・自転車を併用する場合の非課税限度額

自宅から最寄り駅まで車やバイクを使い、そこから電車で通勤するなど公共交通機関と車などを併用している場合は、それぞれの非課税限度額を合算して判断します。

具体的には、「車の通勤距離に応じた非課税限度額」と「公共交通機関の定期券相当額」の合計が、月額15万円を上限とした非課税限度額となります。

例えば、マイカー分が月額8,000円(片道10km以上15km未満)、電車の定期代が月額3万円を支給している場合、非課税限度額の合計は37,300円(マイカー分 7,300円+定期代 30,000円)であるため、合計額の38,000円から37,300円を引いた700円が課税となります。なお、合計額が15万円を超える場合は、超過分が課税対象となります。

通勤手当の課税・非課税における注意点

通勤手当の課税・非課税の区分は、非課税限度額と支給額を確認するだけでなく、年末調整や社会保険料の計算において注意が求められます。

通勤手当の課税と非課税を間違えないようにする

まずは課税と非課税の対象となる通勤手当を間違えないように注意しましょう。

もし何らかの事情で課税すべき通勤手当を非課税で計上すると、所得税の未納が発生する可能性があります。

税金の徴収不足が判明した場合は、本来納めるべき税金の支払いのほかに、延滞金が加算される恐れがあるため、誤りがわかった時点で会社専任の税理士か税務署に確認し、適切に修正処理を行う必要があります。

通勤手当を課税で支給したときは年末調整で所得に含める

非課税限度額を超えて課税で支給した通勤手当は、給与所得として所得税(住民税も含む)の課税対象となります。年末調整では、通勤手当の毎月の給与で課税した累計額を給与総額に含めて所得税の精算を行わなければなりません。

年間を通じて課税した通勤手当が発生しているにもかかわらず、給与総額に含めずに年末調整を行うと、所得税の計算が不足し、従業員が追加で税金を納めるケースが生じる可能性があります。

年末調整の前に必ず課税・非課税の区分が正しく計算されているか、確認するようにしましょう。

社会保険料の計算には通勤手当の全額が含まれる

社会保険料の計算の基礎となる報酬を算出する際は、税制上の取り扱いとは異なり、通勤手当の課税・非課税に関わらず全額が対象となります。

例えば、基本給が月額30万円の従業員に毎月3万円(非課税)の通勤手当を支給している場合、基本給と通勤手当を合計した33万円を基準に社会保険料を算出します。

このように、社会保険料と所得税では計算が異なる点に注意が必要です。

通勤手当の課税・非課税に関するよくある質問

通勤手当の課税・非課税については、実務上さまざまなケースで判断に迷うことがあるでしょう。

特に在宅勤務の普及や多様な雇用形態への対応など、近年は特に複雑な状況が増えています。ここでは「よくある質問」として、実務に沿った内容を解説をします。

在宅勤務者に一律で通勤手当を支給している場合も全額が非課税になりますか?

在宅勤務者に対して一律で通勤手当を支給している場合は、その全額が非課税になるとは限りません。

非課税となる通勤手当は、あくまで「実際に通勤に要した費用」が前提です。在宅勤務の日には通勤が発生しないため、出勤実態のない日数分まで含めて一律支給している場合、実費を超えた部分は給与として課税対象になる可能性があります。

国税庁の見解でも、通勤手当の非課税規定は実際の通勤に対応するものとされています。特に在宅勤務と出勤が混在する従業員に対して一律支給を行う場合は、実際の出勤日数や定期券の購入有無を確認し、実態に即した支給額や課税区分になっているかを見直すことが重要です。

参考:国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ

通勤でグリーン車を利用した場合の「グリーン料金」は非課税枠に含まれますか?

グリーン車のグリーン料金については、原則として非課税通勤手当の対象外となります。非課税となる通勤手当は「最も経済的かつ合理的な経路および方法」による通勤費用が基準とされており、グリーン車は通常の通勤に必要な手段とはみなされないためです。

ただし、通勤距離が非常に長く、合理的な経路として新幹線や特急列車を利用する場合については非課税の対象となるケースもあります。

従業員からグリーン車利用を前提とした通勤手当の申請があった場合は、通常料金との差額部分が課税となることを事前に説明し、課税・非課税の内訳を明確に分けて給与計算に反映させましょう。

参考:国税庁「電車・バス通勤者の通勤手当

6ヶ月定期券を半年に1回まとめて支給している場合、非課税限度額の判定はどのように行いますか?

6ヶ月定期券代を特定の月に一括で支給している場合は、非課税限度額の判定は、1ヶ月あたりの金額に換算して判断します。

例えば、6ヶ月定期券代が18万円の場合は1ヶ月あたり3万円となり、非課税限度額の月15万円以内であるため全額非課税として処理できます。

定期券代をまとめて支給している場合は、何ヶ月分の定期券代なのかを把握し、1ヶ月分に換算したうえで課税・非課税を判断するようにしましょう。

出勤日数に応じて通勤手当を支給する場合でも非課税のルールは同じですか?

出勤日数に応じて支給する通勤手当についても、非課税のルールは同じです。出勤日数に応じて支給する場合は、1ヶ月分の合計支給額が非課税限度額以内に収まっているかを確認します。1日あたりの通勤手当が少額であっても、月の支給合計額が非課税限度額を超えれば超過分は課税対象となります。

特にパート・アルバイトは出勤パターンが不規則になりやすいため、月ごとの支給総額を都度確認し、課税・非課税の判断を行うようにしましょう。

まとめ:正確な課税・非課税の判断と業務効率化にはシステム活用がおすすめ

通勤手当は、支給額が非課税限度額の範囲内であれば所得税がかからない一方、超過分は給与所得として課税対象となります。

非課税限度額は通勤手段(公共交通機関・車やバイクなど)によって異なり、かつ2026年4月に改正された非課税限度額も踏まえた計算が必要です。また、課税・非課税の区分の誤りは、所得税の過不足や延滞金の発生につながるリスクがあるため、適切な計算処理が求められます。

加えて近年では、法改正によって非課税限度額の変更が続いており、通勤手当の事務処理も複雑化してきました。こうした通勤手当の管理業務を正確かつ効率的に行うには、専用システムの活用がおすすめです。

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監修者:社会保険労務士 北 光太郎 氏
監修者:社会保険労務士 北 光太郎 氏
きた社労士事務所 代表 https://kita-kotaro.com/ 大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士資格を取得し、不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善などさまざまな取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。読者に分かりやすく信頼できる情報を伝えるとともに、Webメディアの専門性と信頼性向上を支援している。
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