在宅勤務制度を導入する場合の従業員に対する通勤費の扱いや支給制度
近年、在宅勤務制度を導入している企業が増えつつあるなかで、従業員に対する通勤費の支給制度は、企業によって異なります。なかには、在宅勤務の開始を受け、通勤費の支給制度をどう整えればよいのかお悩みの方もいるのではないでしょうか。
本記事では、在宅勤務制度を導入する場合に、通勤費の支給が必要なのか、また支給制度を変更する場合のポイントも解説します。
目次[非表示]
- 1.在宅勤務の従業員に通勤費の支給は必要?
- 2.在宅勤務制度の導入で通勤費の支給制度を変更する場合のポイント
- 2.1.①現状の交通費支給額と在宅勤務率を確認する
- 2.2.②就業規則を確認する
- 2.3.③通勤定期券の割引率を考慮する
- 3.通勤費の課税・非課税ルール
- 3.1.①公共交通機関で通勤するケース
- 3.2.②自家用車で通勤するケース
- 4.まとめ
在宅勤務の従業員に通勤費の支給は必要?
在宅勤務の従業員に対する通勤費の支給は、就業規則に則って判断することとなります。
通勤費の支給は、法令で義務化されているわけではないため、支給額や支給の有無は事業者が決めることになります。一般的には、就業規則に基づいて支給するため、規定に通勤費の支給を明記していない場合、支払う必要はありません。
なお、通勤費の支給は、福利厚生の一環として導入している会社が多く、その場合、従業員の給与所得とみなされます。一定の限度額を超えなければ課税対象にはなりません。
在宅勤務制度の導入で通勤費の支給制度を変更する場合のポイント
在宅勤務制度を導入すると、会社への出社日数が減るため、支給制度によっては通勤費も減額することになり、事業者としてはコスト削減につながります。しかし、在宅勤務制度を導入したからと言って、企業側が従業員の許可を得ず通勤費の支給制度を変更して、支給額を減額することとなると、法令違反になるリスクがある点には注意しなければなりません。
ここでは、在宅勤務制度の導入に際して、通勤費の支給制度を変更する場合の3つのポイントを紹介します。
①現状の交通費支給額と在宅勤務率を確認する
通勤費の減額を検討する際は、まず現時点で支払っている交通費を確認したうえで、社内の在宅勤務者の比率を把握します。これは、実費精算で支給する際と通勤費で支給する際とでの差異を確認する必要があるためです。
想定よりもコスト削減ができなかったという事態にならないためにも、まずは現状かかっている通勤費を把握したうえで、今後削減できる可能性のある通勤費を計算してみてください。
②就業規則を確認する
通勤費は、原則就業規則に基づいて支給するため、支給に関する内容を変更したいときは、必ず就業規則を確認しなければなりません。在宅勤務時の通勤費の廃止や変更などの手続きも、就業規則の内容に応じて変わります。
なお、就業規則そのものを見直す場合は、従業員から意見を集めたうえで、労働基準監督署に届け出る義務があります。
③通勤定期券の割引率を考慮する
通勤費を実費精算にて支給する場合は、通勤定期券を購入した際にかかる費用と比較することを忘れないように気をつけてください。通勤定期券には割引制度が認められているため、区間内での公共交通機関の利用回数によっては、実費精算での支給よりも安くなるケースが少なくないためです。
実費精算に切り替えたことで、かえって事業者が支給する通勤費のコストが増えてしまったというリスクを避けるためにも、従業員の出社日数に応じて、実費精算か通勤定期代を支給するか判断するのがおすすめです。
通勤費の課税・非課税ルール
在宅勤務制度の導入にともなって、会社から離れた場所に引っ越す従業員や、通勤手段を電車から自家用車に切り替える従業員がいるかもしれません。その際、気をつけなければならないのが、会社への通勤経路が変わることによる非課税限度額の超過です。
ここでは、通勤費の支給にあたって、確認すべき非課税限度額について、通勤手段ごとに解説します。
①公共交通機関で通勤するケース
公共交通機関で通勤する場合、1か月あたりの非課税限度額は15万円と決められています。15万円を超えると、超過分が課税対象になります。
②自家用車で通勤するケース
自家用車の通勤の場合、1か月あたりの非課税限度額は距離によって異なります。具体的な違いは、以下の表をご参照ください。
▼自転車で通勤する場合の非課税限度額
通勤距離 |
非課税限度額 |
片道2km未満 |
4,200円 |
片道10~15km未満 |
7,100円 |
片道15~25km未満 |
1万2,900円 |
片道25~35km未満 |
1万8,700円 |
片道35~45km未満 |
2万4,400円 |
片道45~55km未満 |
2万8,000円 |
片道55km以上 |
3万1,600円 |
国税庁『No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当』を基に作成
非課税限度額を超えた金額は、通勤費を支給したその月の給与に上乗せしたうえで、源泉徴収が行われます。
公共交通機関に加えて、自家用車を使っている場合は、“公共交通機関の1か月の金額”と“片道の距離ごとに定められている非課税限度額”を合算した金額が非課税限度額になります。なお、この場合の非課税限度額も15万円です。
まとめ
この記事では、在宅勤務の通勤費について以下を解説しました。
- 在宅勤務の従業員に通勤費の支給は必要?
- 在宅勤務制度の導入で通勤費の支給制度を変更する場合のポイント
- 通勤費の課税・非課税ルール
通勤費の支給は義務化されているわけではないため、その額や制度の内容は企業側の判断に委ねられています。在宅勤務制度の導入にあたって、通勤費の支給制度を変更する場合は、従業員への意見聴取をはじめとした手順を踏む必要があります。
また、従業員の通勤手段によって、非課税限度額が異なります。非課税限度額は法改正により変更されることがあるため、最新情報の確認が肝要です。
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