通勤手当は定時決定(算定基礎届)でどのように計算する?計算方法と注意点を解説


社会保険の定時決定(算定基礎届)の際に、通勤手当も報酬に含めるのか、どのように計算するのかを迷う方も多いのではないでしょうか。特に定期代をまとめて支給している場合や通勤経路が変更された場合は、金額を正しく反映することが求められます。


本記事では、実務上よくある通勤手当の支給ケースをもとに、計算方法や注意点をわかりやすく解説します。


目次[非表示]

  1. 1.定時決定(算定基礎届)の報酬には通勤手当を含める
  2. 2.定時決定(算定基礎届)の通勤手当の計算方法
    1. 2.1.定期代をまとめて支払っているケース
    2. 2.2.途中で通勤経路が変更になったケース
    3. 2.3.先払いから後払いに変更したケース
  3. 3.定時決定(算定基礎届)の通勤手当における注意点
    1. 3.1.随時改定(月額変更届)に該当する可能性がある
    2. 3.2.4月と6月に定期代を支給していると二重計上になる可能性がある
    3. 3.3.定期券や回数券を渡している場合は現物支給にあたる
  4. 4.まとめ


定時決定(算定基礎届)の報酬には通勤手当を含める

定時決定とは、4月から6月に支払われた報酬(給与)の平均額をもとに年に1回社会保険料の改定を行う手続きのことです。

この定時決定(算定基礎届)では、課税・非課税に関わりなく支給された通勤手当はすべて報酬に含めて計算します。

実費を支給している場合や定期代をまとめて支給している場合など、支給方法に関わらず通勤手当として支給している場合は報酬に含めます。

ただし、在宅勤務の人が業務命令により一時的に出社し、その移動にかかる実費を会社が負担する場合は、実費弁償と認められ、標準報酬月額の算定基礎となる報酬には含みません。

通勤手当か実費弁償かの判断は、労働契約によって自宅と勤務先を行き来する働き方が基本なのか、在宅勤務が基本なのかで判断することになります。

参考:日本年金機構


定時決定(算定基礎届)の通勤手当の計算方法

通勤手当の支給方法は月ごとに支払う場合と数ヶ月分の定期代をまとめて支払う方法が一般的です。

しかし、4月から6月の途中で通勤経路が変更になったケースや支払い方法が変わったケースもあるでしょう。ここでは、定時決定(算定基礎届)における様々なケースの通勤手当の計算方法を解説します。


定期代をまとめて支払っているケース

3ヶ月分や6ヶ月分など定期代をまとめて支払っているケースでは、実際に支給された金額ではなく、月割りした金額を通勤手当として報酬に含めて計算します。

月割りした際に発生する端数については。支給月に端数を上乗せするのが原則です。

たとえば、1万円の3ヶ月の定期代が4月に支給された場合、すべての月を切り捨てると9,999円になってしまうため、支給月(4月)を3,334円、その他の月を3,333円として調整します。


途中で通勤経路が変更になったケース

通勤手当を前払いしている場合で、4月から6月の間に通勤経路が変わり、通勤手当の金額が変更され、払戻が発生する場合もあるでしょう。その場合は、払戻額は含めず新しい通勤手当の月割り額を報酬額に含めます。

払戻額はあくまでも前払いした分の精算であり、その月の通勤手当として支給した手当ではないため、報酬に含めると本来の「その月に支払われた対価」としての性質とずれてしまい、実態とかけ離れた報酬月額となってしまいます。結果として、標準報酬月額が不適切に決定される恐れがあるため、払戻額を含めず報酬を計算しましょう。

具体例は以下のとおりです。


【具体例】

6ヶ月分の通勤手当30,000円(定期代A)を4月に支給し、6月の途中で通勤経路が変更になり通勤手当が60,000円(定期代B)になった場合


定期代A:30,000円(6ヶ月)
定期代B:60,000円(6ヶ月)
変更日:6/16


・定時決定に算入する通勤手当
 4月:5,000円
 5月:5,000円
 6月:7,500円


【計算方法】

4月・5月 :30,000円 ÷ 6ヶ月 =5,000円
6月1日~6月15日:定期代A(5,000円)の日割り → 5,000円 ÷ 30日 × 15日 = 2,500円
6月16日~6月30日:定期代B(10,000円)の日割り → 10,000円 ÷ 30日 × 15日 = 5,000円


なお、通勤経路を変更した場合に給与締日までの期間を実費支給する場合もあります。通勤手当の計算方法は企業によって異なりますので、それぞれの支給方法にあわせて報酬を算出しましょう。


先払いから後払いに変更したケース

会社で通勤手当の支払い方法が変更になり、従来前払いで定期代を支給していた会社が5月から実費支給とし、翌月払いに切り替えたケースです。

このケースでは、5月を対象月として除外し、4月と6月の2ヶ月の平均報酬で定時決定を行います。


【具体例】
4月に30,000円の定期代を支給し、5月1日から実費支給に変更。5月分の通勤手当9,000円を6月に支給する場合。


算定対象月

実際の支給

定時決定に算入する

通勤手当

補足

4月

3ヶ月定期代

30,000円を支給

10,000円

4〜6 月分を3で割った金額(月割りした金額)を算入

5月

(算定対象月から除外)

支給なし
※5/1付で定期代分を払戻し

0円(除外)

払戻額は定時決定に算入しない

6月

5月分実費

9,000円を支給

9,000円

この月から実費精算


上記の表のとおり、5月分が6月に支給されるため、5月は通勤手当の支給がされません。5月を対象月に含めてしまうと報酬額が低くなってしまうため、実態を反映しない標準報酬月額となるおそれがあるからです。

このように支給方法の変更により一時的に支払が途絶えた場合は、その月を除外して計算します。

参考:日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集 定時決定について 問3


定時決定(算定基礎届)の通勤手当における注意点

定時決定(算定基礎届)の計算を行う際には、通勤手当の金額や支給方法によって注意しなければならない点があります。ここでは定時決定(算定基礎届)の通勤手当における注意点を3つ紹介します。


随時改定(月額変更届)に該当する可能性がある


通勤手当は基本的に定時決定(算定基礎届)の対象となりますが、その支給額が大幅に変動する場合は、随時改定(月額変更届)に該当する可能性があります。

たとえば、住所変更や交通手段の変更によって通勤手当が増減し、その結果、固定的賃金の変動要件(昇降給の変動が2等級以上)を満たした場合は、随時改定が必要です。通常、算定基礎届は毎年1回の定時決定により標準報酬月額を決定しますが、随時改定に該当するケースでは、定時決定による標準報酬月額の変更を待たずに、新たな標準報酬月額が適用されることになります。

特に、通勤手当の見直しが4月〜6月に行われた場合、算定基礎届に記載する報酬額がそのまま適用されるのか、随時改定の手続きを取るべきなのかを判断する必要があります。


4月と6月に定期代を支給していると二重計上になる可能性がある

3ヶ月定期代を前払いしている会社で、4月に入社した新入社員や中途採用者などに対し、3ヶ月分の定期代を4月と6月に支給するケースがあります。これは4月が入社月であるため、本来3月に支払う定期代を4月の給与で支払ったために発生するケースです。

4月と6月に支給する方法の場合、4月・5月・6月の報酬をもとに標準報酬月額を決定する際に、通勤手当が実際よりも多く算入されてしまう可能性があります。

たとえば、4月に4月~6月分の定期代を支給し、6月に7月~9月分の定期代を支給する場合、定時決定(算定基礎届)において、通勤手当が二重計上されている可能性があるということです。

その結果、標準報酬月額が本来の金額よりも高く算定される恐れがあり、従業員の社会保険料負担が必要以上に増えてしまう可能性があります。

そのような状況を避けるためには、定期代を毎月の報酬として均等に按分して計上する方法が有効です。実務上、3ヶ月ごとに定期代を支給している場合でも、算定基礎届においては月ごとに分割して報酬に含めるのが原則です。定時決定の計算ミスを防止するためにも支給実績にとらわれず、対象期間中に該当する通勤手当を正確に月割りして報酬を計算しましょう。


定期券や回数券を渡している場合は現物支給にあたる

通勤手当を現金や給与で支給する場合は「金銭支給」となりますが、定期券や回数券などの形で提供されると「現物支給」とされます。

社会保険の標準報酬月額を決定する際、現物支給されたものは「現物給与」として金額換算され、報酬に含まれることになります。


まとめ

定時決定(算定基礎届)における通勤手当は、課税・非課税を問わず報酬に含めて計算する必要があります。

また、通勤手当が定期代としてまとめて支払われている場合は月割りして1ヶ月単位に換算し、4月から6月に変更が生じた場合は、変更後の通勤手当を調整して計算する必要があります。このように定時決定(算定基礎届)での通勤手当の取扱いについては、正確な対応が求められます。

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