"年収の壁"で異なる!通勤手当の年収計算上の扱い方を解説

通勤手当は、いわゆる“年収の壁”によって社会保険や税金の取り扱いに影響をもたらす場合があります。交通手段や費用ごとに適用される規定が細かく定められているため、人事・総務担当者はこれらを正しく理解し、通勤手当を適切に管理することが必要です。


本記事では、年収の壁で変わる通勤手当の扱い方を、注意点とともに解説します。


目次[非表示]

  1. 1.扶養の種類
    1. 1.1.①税法上の扶養
    2. 1.2.②社会保険上の扶養
  2. 2.通勤手当が年収に含まれるかどうかは年収の壁によって異なる
    1. 2.1.①103万円の壁
    2. 2.2.②106万円の壁
    3. 2.3.③130万円の壁
  3. 3.そのほか事務手続き上の注意点を補足
    1. 3.1.①公共交通機関を利用する場合
    2. 3.2.②自家用車を使用する場合
    3. 3.3.③公共交通機関と自家用車を併用する場合
  4. 4.まとめ


扶養の種類

本題に入る前に、まずは年収の壁を理解するうえで重要な、扶養の種類をお伝えします。扶養は、“税法上の扶養”と“社会保険上の扶養”の2種類に分けられます。


①税法上の扶養

税法上の扶養とは、家計を支える扶養者の配偶者や子どもの年収が103万円以下である場合に、扶養者が一定金額の所得控除を受けられる制度です。


この制度を利用することで、扶養者の住民税や所得税を算出する課税所得が抑えられるため、最終的に納める税の負担を軽減できます。また、配偶者や子どもの所得税と住民税も控除されるという税法上のメリットもあります。


②社会保険上の扶養

社会保険上の扶養は、家計を支える扶養者が加入する社会保険に、配偶者や子供といった被扶養者も加入できる制度です。


配偶者や子どもは、扶養者と同じ社会保険に加入することとなるため、国民健康保険への加入および保険料の納付が不要となります。



通勤手当が年収に含まれるかどうかは年収の壁によって異なる

ここからは、年収の壁ごとに異なる通勤手当の扱い方について解説します。


①103万円の壁

103万円の壁とは、税法上の扶養に入れるかどうかを分けるボーダーラインのことです。


年収が103万円以下の場合、通勤手当は税法上の所得と見なされないため、原則として年収に含みません。


ただし、通勤手当が非課税限度額を超過した場合は、その分を年収に含みます。非課税限度額は、非課税となる通勤手当の限度額のことで、交通手段や通勤距離に応じて異なります。詳細は後述するため、引き続きご覧ください。


②106万円の壁

106万円の壁とは、社会保険への加入が必要となる目安のことです。年収が106万円を超え、一定の条件を満たした場合は、勤務先の社会保険への加入義務が発生します。


年収が106万円以下の場合は、通勤手当を年収に含みません。


③130万円の壁

130万円の壁は、社会保険上の扶養から外れる年収のボーダーラインです。年収が130万円を超える場合、配偶者や親の扶養から外れて自分で社会保険への加入が必要です。


このとき、社会保険料は標準報酬月額を基に算出されます。
標準報酬月額は、労務に対して支払われるすべての収入を対象としているため、通勤手当は年収に含まれます。


通勤手当の詳しい処理方法については、以下の記事をご確認ください。

  通勤手当は社会保険料の計算に含まれる? 適切な処理方法とは 従業員に支給する通勤手当は、社会保険料の計算に含まれるのでしょうか。 通勤手当が、社会保険料の計算に含まれるか否かで、支給する給与の額が変わります。社会保険料や税金の計算を担当される方は、適切な給与計算を行うために、通勤手当の正しい処理方法を把握しておかなければなりません。 そこで本記事では、社会保険料の計算における通勤手当の扱いとあわせて、通勤手当の課税の取り扱いについても解説します。 駅すぱあと 通勤費Web



そのほか事務手続き上の注意点を補足

通勤手当に関する事務手続き上の注意点を、以下で解説します。


①公共交通機関を利用する場合

先述したように、通勤手当には非課税限度額が設けられており、超過分に対して所得税が課されます。


電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合、支給される通勤手当が15万円以内であれば非課税となり、15万円を超える場合はその超過分が課税対象となります。


②自家用車を使用する場合

車やバイクといった自家用車で通勤する場合の非課税限度額は、片道の通勤距離に応じて、以下のように定められています。


▼自家用車の通勤手当に適用される非課税限度額

片道の通勤距離

1ヶ月あたりの限度額

2km未満

全額課税

2km以上10km未満

4,200円

10km以上15km未満

7,100円

15km以上25km未満

1万2,900円

25km以上35km未満

1万8,700円

35km以上45km未満

2万4,400円

45km以上55km未満

2万8,000円

55km以上

3万1,600円


参照元:国税庁『No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当』


通勤距離が2km以内の場合、徒歩や自転車による通勤が可能と見なされるため、支払われた通勤手当はすべて年収に含まれ、課税対象となります。


③公共交通機関と自家用車を併用する場合

複数の交通手段を併用する場合の通勤手当は、公共交通機関の月額と、自家用車での通勤に適用される非課税限度額との合計が15万円以下である場合に限り、非課税となります。


例えば、自宅から最寄り駅までの11km(非課税限度額7,100円)を自家用車で、最寄り駅から勤務先までを電車(1ヶ月あたり1万円)で移動する場合は、月額の合計が17,100円となるため非課税です。この合計額が15万円を超える場合は、超過分が課税対象となります。


なお、使用する通勤ルートが合理的であると認められなければ、課税対象となる場合があるので注意が必要です。


通勤手当の課税ルールの詳細は、こちらの記事で解説しています。

  通勤手当の課税ルールや非課税限度額を注意点とともに解説 通勤手当について調べているものの、通勤手当の金額が決まる仕組みがよくわからず、お困りの方もいるのではないでしょうか。交通手段によって課税ルールと非課税限度額は異なるため、間違えないように注意しなければなりません。 本記事では、通勤手当の課税ルールと非課税限度額を、注意点とともに解説します。 駅すぱあと 通勤費Web



まとめ

この記事では、年収の壁に基づく通勤手当の扱い方について以下の内容を解説しました。


  • 扶養の種類
  • 通勤手当の扱いは年収の壁によって異なる
  • 通勤手当には非課税限度額がある


通勤手当を年収と捉えるかどうかは、3つの年収の壁ごとに異なります。税法上の扶養範囲を示す103万円の壁と、社会保険上の扶養範囲を示す106万円の壁では、通勤手当は年収に含みません。対して社会保険への加入が義務化される130万円の壁では、通勤手当を年収に含めます。


年収が103万円あるいは106万円以下の方は、通勤手当が非課税となりますが、交通手段や費用によっては、課税対象となるケースがあります。人事・総務担当者の方は、通勤手当を管理する際、今回紹介した年収で異なる通勤手当の扱い方や非課税限度額を参考にしてください。


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