通勤手当の欠勤控除のやり方とは?実務対応と計算方法、就業規則のポイントを解説

給与計算で従業員の欠勤を処理する際、通勤手当をどのように処理するか迷われる方も多いのではないでしょうか。
通勤手当は基本給や諸手当とは性質が違い、実費支給としての意味合いも強いため、通常の欠勤控除と扱いが異なる場合があります。
本記事では、欠勤に対する通勤手当の計算例や就業規則(賃金規程)を整備する際のポイントなどを解説します。
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通勤手当の欠勤に対する基本的な考え方
労働基準法において「会社が通勤手当を支給しなければならない」という法的な義務はありません。
しかし、就業規則(賃金規程)で支給要件が定められている通勤手当は、会社に支払義務が生じるため、労働基準法上の「賃金」に該当します。そのため、「ノーワーク・ノーペイの原則(民法第624条)」により、従業員が働いていない分の賃金を支払わない(欠勤控除する)ことは基本原則となります。この基本原則を踏まえた上で、通勤手当の欠勤控除を考える際は、以下の2つの支給実態に分けて整理する必要があります。
- 実費を支給している:実際にかかった通勤費を支給
- 定期代を支給:欠勤控除をするかは状況によって判断
日々の交通費など実際にかかった費用を補填する実費支給の性質を持つ場合、出勤していない日の通勤費用はそもそも発生しないため、欠勤分を支払わない(控除する)ことは合理的です。
一方で、毎月一定額を支払う定期支給の場合や、すでに数ヶ月分の定期券代を前払いしている場合、欠勤した日数分を日割りで計算して控除するかは、慎重な判断が必要です。
いずれの性質であっても、欠勤控除を行うためには控除の対象となる条件や具体的な計算方法を就業規則(賃金規程)に定めておくことが大切です。
参照元:e-Gov法令検索「民法第624条」
欠勤があった場合の一般的な通勤手当の計算方法
欠勤があった場合の通勤手当の処理については、各会社の規程に委ねられます。実務上は、大きく分けて以下の3つの計算方法が考えられます。
計算方法 | 内容 |
必ず月額を支給する(欠勤控除なし) | 欠勤があっても満額支給する。 |
日割り計算で支給または欠勤控除 | 出勤日数分のみ支給する。または欠勤日数分を差し引く。 |
一定日数以上の欠勤で欠勤控除 | 「15日以上欠勤した場合は日割り支給」など。 |
いずれにしても、従業員の不利にならないよう実態に沿った計算方法を適用しなければなりません。従業員側の負担が大きい場合は労使トラブルを招く原因となるため、注意が必要です。
なお、通勤手当は原則非課税で支給しているため、欠勤控除する際も原則として非課税で控除されます。
定期代を支給する場合の欠勤計算の注意点
従業員に通勤手当として1ヶ月以上の定期券代を支給している会社では、欠勤時の控除をどうすべきか悩む給与担当者も多いのではないでしょうか。実務では、欠勤期間に応じて以下のように対応を分けるのが一般的です。
- 数日欠勤した場合
- 全日欠勤・月途中の入退社の場合
数日欠勤した場合
定期代を支給している場合、一般的に数日の欠勤であれば「欠勤控除しない」ケースが多くみられます。その理由は、実態として定期券は数ヶ月単位で購入しており、数日欠勤しても従業員が支払った定期代の費用は変わらないためです。
数日欠勤で控除を行うと、従業員にとっては実際に払った定期代よりも通勤手当が少なくなってしまい、労使トラブルが生じる可能性があります。
数ヶ月分の定期代をまとめて支給している場合は、就業規則(賃金規程)に欠勤控除の対象となる状況(長期欠勤や休職など)を明記し、トラブルのないよう規程しておくことがポイントです。
一定日数以上を欠勤をしている場合
一定日数以上を欠勤している場合は、会社の就業規則(賃金規程)に沿って処理をします。例えば、「15日以上欠勤した場合は通勤手当として支給した定期券相当額について、欠勤開始日以降の未使用相当分を精算するものとする」と定められていれば、定期代をそのまま支給し続けるのではなく、欠勤日数に応じて未使用相当分を精算(給与での控除や返還など)するなどの対応ができます。
15日以上としているのは、月の半分以上を欠勤している場合、その後も長期療養が必要となるケースが多く見られるためです。定期代をそのまま支給し続けるよりも、一度通勤手当を精算した方が合理的と考えられる場合があることから、このような基準を設けている会社もあります。
全日欠勤・月途中の入退社の場合
給与計算期間の全日を欠勤した場合は、「不支給」とするのが一般的です。通勤の事実がなく費用も発生していない状況で通勤手当を満額支給するのは合理的ではないからです。
なお、定期代を数ヶ月分を前払いで支給している場合は、長期欠勤(休職など)を開始した時点で従業員に定期券を払い戻し(解約)してもらい、未経過分を給与で精算するのが一般的です。
また、月の途中で入退社した場合や育児休業などからの復職明けで月の途中から出勤した場合の通勤手当は、実務の煩雑さを避けるために「入社日や復職日を利用開始日とする定期代」をそのまま支給する運用を用いている会社もあります。一方で、復帰から直近の定期代支給月までは出勤日数に応じた日割り支給や端数期間分の定期代相当額を支給する運用を行っているケースもあります。
ただし、どのような処理をするかは会社の就業規則(賃金規程)によります。
通勤手当の欠勤に対する就業規則(賃金規程)のポイント
もし現在、運用が曖昧であれば、就業規則(賃金規程)を見直すことをおすすめします。就業規則(賃金規程)を整備する際は以下のポイントを押さえておきましょう。
計算式を記載する
通勤手当の欠勤に対応する計算式を就業規則(賃金規程)に記載することは、トラブル防止と透明性確保の観点から重要になります。
就業規則(賃金規程)には、単に「欠勤した場合は欠勤日数分を控除する」と定めるだけでなく、具体的な計算式を明記しましょう。例えば、月額で通勤手当を支給している会社が欠勤控除する場合、以下のような計算式が考えられます。
「通勤手当の控除額 = 1日あたりの往復交通費 × 欠勤日数」
計算式を就業規則(賃金規程)に記載することで担当者による計算のばらつきを防ぎ、一貫した運用が可能となります。
定期代と実費支給の判断基準を明確にする
通勤手当は、月の途中で退職するなど出勤日数が少ない月は「1ヶ月の定期券代」よりも「実費(往復運賃×出勤日数)」の方が合理的な場合があります。
しかし、就業規則(賃金規程)に「一律で定期代の満額を支給する」と書かれていれば、会社は欠勤日数にかかわらず定期代を支給しなければなりません。このような事態を防ぐため、就業規則(賃金規程)では「定期代と実費支給のルール」を明確にすることが望まれます。
【規程例】
月の途中で新たに入社した者、または月の途中で退職する者のその月の通勤手当は、次の算式により日割り計算して支給する。ただし、支給額は1ヶ月分の定期乗車券相当額を上限とする。 計算式:1日の往復運賃の実費 × 出勤日数 |
また、「出勤日数が〇日以下の場合」や「月の途中で休職等を開始し、または休職等から復職した場合」など明確な基準を設けることで、公平に通勤手当が支給できるようになります。
マイカー通勤者のルールも明確にする
マイカー通勤者のガソリン代は「実際に出勤した日数」に比例して費用が変動するため、通勤手当は「実費」あるいは「往復距離×ガソリン単価×1ヶ月の平均所定労働日数」で支給しているケースが一般的です。そのため、就業規則(賃金規程)には公共交通機関利用者の対応とは区別して欠勤時の計算ルールを設けることも検討しましょう。
例えば、「マイカー通勤者は欠勤1日につき月額の通勤手当を日割り計算した額を控除する」など、マイカー通勤者のルールも明確にします。なお、マイカー通勤者の場合は、課税・非課税の対応に注意が必要です。例を見ていきましょう。
【例】
欠勤控除 3日 × 360円 = 1,080円 欠勤控除後の通勤手当 7,200円 - 1,080円 = 6,120円(非課税:4,200円・課税:1,920円) |
このように、マイカー通勤の場合は欠勤日数によって非課税・課税額が変わる可能性があります。給与計算時には処理を誤らないよう注意しましょう。
まとめ:通勤手当の欠勤対応はルールの明確化と規程整備が大切
通勤手当の欠勤対応は、実費支給か定期券代の支給かといった支給方法や、欠勤日数によっても処理方法が異なります。就業規則(賃金規程)などの規程がないまま独自の判断で控除を行うと、労使トラブルに発展する恐れがあるため注意が必要です。
トラブルを未然に防ぎ、透明性の高い運用を行うためには、就業規則(賃金規程)に「具体的な計算式」や「欠勤時の判断基準」を定めておくことが適切に運用するときのポイントとなります。
しかし、従業員ごとの出勤日数計算や退社精算、休職などの状況に応じた通勤手当の対応は、給与担当者の負担が大きくなります。こうした複雑な通勤手当の管理・計算処理を解決するには、業務を自動化するシステムの活用が効果的です。
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