【令和8年(2026年)4月改正】通勤手当の非課税限度額引き上げ・駐車場代の非課税枠創設の概要と実務対応

令和8年(2026年)度税制改正により、自動車や自転車などの交通用具を利用して通勤する給与所得者に向けた通勤手当の非課税限度額が改正されました。
主な改正内容は「片道65km以上の通勤者の非課税限度額の引き上げ」と、新たに設けられた「月額最大5,000円の駐車場代等の非課税枠創設」の2つです。改正は令和8年(2026年)4月1日以後に支払われる通勤手当から適用されます。
本記事では、通勤手当の非課税限度額引き上げと駐車場代の非課税枠創設の詳細や具体的な計算方法を解説します。
※令和7年(2025年)11月の非課税限度額の改正については、こちらの記事をご確認ください。
目次[非表示]
- 1.令和8年(2026年)4月通勤手当の非課税限度額の改正概要と背景
- 2.通勤手当の非課税限度額の引き上げ
- 3.駐車場代等の非課税枠の創設
- 4.駐車場等の利用がある場合の非課税限度額の計算例
- 5.通勤手当の非課税限度額引き上げと駐車場代の非課税枠創設でよくある質問
- 5.1.4月分の通勤手当を、前月である「3月25日」に支払いました。新旧どちらの限度額が適用されますか?
- 5.2.4月以降の給与で過去分(3月以前分)の通勤手当の不足額を遡及して支払いました。過去分は新限度額の対象になりますか?
- 5.3.駐車場を特定の月に3ヶ月分や6ヶ月分など一括で支給した場合はどのように計算しますか?
- 5.4.会社から「通勤手当」という名目で本人に対して駐車場代を支給しています。駐車場代の非課税限度額が加算されますか?
- 5.5.従業員が選んだ会社付近の駐車場を会社が従業員に代わって契約し、毎月駐車場代を負担しています。会社が負担した駐車場代は通勤手当として非課税となりますか?
- 6.まとめ:複雑化する通勤手当の正確な計算はシステム化がおすすめ
令和8年(2026年)4月通勤手当の非課税限度額の改正概要と背景
近年、物価高やガソリン代高騰が続く中、駅周辺・勤務先周辺の駐車場代が労働者の大きな自己負担となっています。
そのような社会情勢や労働環境の変化を踏まえ、マイカーや自転車などで通勤する労働者の負担を軽減する目的で、令和8年(2026年)4月より以下2点の改正が行われました。
- 片道65km以上の遠距離通勤者の非課税額の引き上げ
- 月額最大5,000円の駐車場代等の非課税枠の創設
この改正により、遠距離通勤者が課税対象となっていた通勤手当の非課税枠が広がり、マイカー・自転車通勤者の手取り額が増加につながることが期待されます。
参考:国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正について」
通勤手当の非課税限度額の引き上げ
1つ目の改正は、自動車や自転車などの「交通用具」を使用している従業員の非課税限度額引き上げです。電車やバスなどの「公共交通機関のみ」を利用している場合の非課税限度額(月額最高150,000円)については変更ありません。
具体的には、マイカー・自転車通勤者の非課税限度額は、片道65km以上の区分が新たに追加され、以下のとおり引き上げられました。これまで「55km以上」で一律38,700円となっていた非課税限度額が見直され、遠距離通勤者の税負担が軽減されることになります。
通勤距離(片道) | 改正前(旧) | 改正後(新) | 差額(月額) |
2km未満 | 全額課税 | 全額課税 | 変更なし |
2km以上 10km未満 | 4,200円 | 4,200円 | 変更なし |
10km以上 15km未満 | 7,100円 | 7,300円 | 変更無し |
15km以上 25km未満 | 12,900円 | 13,500円 | 変更なし |
25km以上 35km未満 | 18,700円 | 19,700円 | 変更なし |
35km以上 45km未満 | 24,400円 | 25,900円 | 変更なし |
45km以上 55km未満 | 28,000円 | 32,300円 | 変更なし |
55km以上65km未満 | 38,700円 | 38,700円 | 新設 |
65km以上75km未満 | 45,700円 | 新設 | |
75km以上85km未満 | 52,700円 | 新設 | |
85km以上95km未満 | 59,600円 | 新設 | |
95km以上 | 66,400円 | 新設 |
※一定の要件を満たす駐車場等を利用し、その料金を負担している場合は上記の金額と1ヶ月当たりの駐車場等の料金相当額(上限5,000円)との合計が非課税限度額となります。(通勤距離が片道2キロメートル未満である人を除く)
参照元:国税庁「No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当」
駐車場代等の非課税枠の創設
2つ目の改正が「駐車場等の非課税枠」の創設です。
自動車・バイク・自転車を利用して通勤する従業員が、一定の要件を満たす駐車場等を利用している場合には、通勤距離に応じた非課税限度額に加え、1ヶ月当たりの駐車場等の料金相当額(上限5,000円)を加算したうえで、課税・非課税額を算出します。
「一定の要件を満たす駐車場等」とは
「一定の要件を満たす駐車場等」とは、以下の要件を満たすものと定義されています。
- 通勤のために使用する交通用具(車や自転車など)を駐車するための施設であること
- 勤務する場所の周辺、または通勤のために利用する交通機関の駅・停留所等の周辺にあること
- 従業員本人がその料金を負担することを常例としていること
なお、従業員の自宅敷地内や自宅付近の月極駐車場は私生活と混同する可能性があるため対象外となります。
また、通勤距離が片道2km未満で全額課税となっている従業員は駐車場代の非課税加算も適用されず全額課税対象となります。
駐車場等の利用がある場合の非課税限度額の計算例
今回の改正に伴い、駐車場等を利用する従業員に対して「本来は非課税であるにもかかわらず、旧基準のまま課税として処理してしまった」という事態にならないよう注意する必要があります。
ここでは、国税庁が公表しているQ&Aをもとに駐車場等の利用がある場合の非課税限度額の計算例を紹介します。
参考:国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正に関するQ&A」
ケース1:駐車場代が上限を超え、課税部分が発生するケース
【前提条件】
- 通勤距離:片道通勤距離50㎞
- 支給額:通勤手当32,300円 + 駐車場代8,000円(合計40,300円)
【計算】
①通勤距離に応じた非課税額:32,300円(片道45km以上55km未満)
② 駐車場分の非課税額:5,000円(上限が5,000円であるため)
③ 非課税限度額:37,300円(①+②)
【結果】
支給額40,300円は非課税限度額37,300円を超過するため、超過した部分の3,000円が課税となります。
ケース2:駐車場代は上限を超えるが、全額非課税となるケース
【前提条件】
- 通勤距離:片道通勤距離50㎞
- 支給額:通勤手当28,000円 + 駐車場代8,000円(合計36,000円)
【計算】
① 通勤距離に応じた非課税額:32,300円(片道45km以上55km未満)
② 駐車場分の非課税額:5,000円(上限が5,000円であるため)
③ 非課税限度額:37,300円(①+②)
【結果】
支給額36,000円は非課税限度額37,300円を下回るため、全額が非課税となります。
ケース3:駐車場代は上限内だが、課税部分が発生するケース
【前提条件】
- 通勤距離:片道通勤距離50㎞
- 支給額:通勤手当33,000円 + 駐車場代4,400円(合計37,400円)
【計算】
① 通勤距離に応じた非課税額:32,300円(片道45km以上55km未満)
② 駐車場代の非課税額:4,400円
③ 非課税限度額:36,700円(①+②)
【結果】
支給額37,400円は非課税限度額36,700円を超過するため、超過した部分の700円が課税となります。
通勤手当の非課税限度額引き上げと駐車場代の非課税枠創設でよくある質問
ここからは、令和8年(2026年)4月の通勤手当非課税限度額改正に伴い、「よくある質問」として実務的な運用について解説します。
4月分の通勤手当を、前月である「3月25日」に支払いました。新旧どちらの限度額が適用されますか?
今回の改正は「令和8年4月1日以後に支払われるべき通勤手当」が対象です。そのため、改正前の「旧限度額」が適用されます。
たとえ支払われた通勤手当が4月分でも前月の3月に支払われている限り、改定前の非課税限度額が適用されます。
4月以降の給与で過去分(3月以前分)の通勤手当の不足額を遡及して支払いました。過去分は新限度額の対象になりますか?
旧限度額の適用となります。支給日自体が4月1日以降であっても、例外として「4月1日前に支払われるべき通勤手当の差額として追加支給するもの」は新限度額の適用から除外されます。
駐車場を特定の月に3ヶ月分や6ヶ月分など一括で支給した場合はどのように計算しますか?
駐車場代を3ヶ月分や6ヶ月分など、複数月分まとめて支給する場合は、一括支給額を対象月数で割り、1ヶ月当たりの金額を算出して判定します。
例えば、3ヶ月分として24,000円を一括支給した場合は、次のように計算します。
24,000円 ÷ 3ヶ月 = 1ヶ月当たり8,000円
この場合、1ヶ月当たりの駐車場代8,000円に対して駐車場代加算の非課税上限(月額5,000円)を適用します。そのため、駐車場代として加算できる非課税額は月額5,000円(3ヶ月分で15,000円)が上限となります。
会社から「通勤手当」という名目で本人に対して駐車場代を支給しています。駐車場代の非課税限度額が加算されますか?
要件に該当しているのであれば、名目が通勤手当であっても駐車場代として処理します。
実務的には、企業側が従業員が実際に駐車場を契約していることを契約書の写しなどで確認することが必須となります。
従業員が選んだ会社付近の駐車場を会社が従業員に代わって契約し、毎月駐車場代を負担しています。会社が負担した駐車場代は通勤手当として非課税となりますか?
実態として、従業員に対して駐車場代相当額の通勤手当を支給しているものと変わらないため、会社が負担している場合でも非課税限度額の計算に含めます。
まとめ:複雑化する通勤手当の正確な計算はシステム化がおすすめ
令和8年(2026年)4月に施行された通勤手当の非課税限度額改正は、片道65km以上の区分追加や、これまで全額課税対象だった駐車場代等に月額最大5,000円の非課税枠が創設されるなど、従業員にとってメリットの大きい内容となっています。
一方で、給与担当者にとっては、片道65km以上の追加された非課税限度額への対応や駐車場代等の非課税要件の精査といった実務負担が増えることになります。
特に駐車場代等については、支給名目に関わらず実態に基づいた判断が求められ、かつ一括支給時の月割計算などの複雑な処理も発生します。
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