育児休業給付金の通勤手当のルールとは?月割りの方法と支給申請書ごとの違いを解説

育児休業給付金(出生時育児休業給付金)を申請する際、「通勤手当はどう扱われるのか」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

育児休業給付金の手続きでは、申請する書類によって同じ通勤手当であっても計算方法に違いがあります。

本記事では、育児休業給付金手続きに必要な各書類における通勤手当の計算方法の違いについて詳しく解説します。

目次[非表示]

  1. 1.育児休業等給付金の種類と申請書類の全体像
  2. 2.「休業開始時賃金月額証明書」と「支給申請書」の概要と手続きの違い
    1. 2.1.休業開始時賃金月額証明書の役割・目的
    2. 2.2.支給申請書の役割・目的
  3. 3.書類別の通勤手当の取り扱い
    1. 3.1.休業開始時賃金月額証明書の通勤手当の取り扱い
    2. 3.2.育児休業給付金支給申請書の通勤手当の取り扱い
    3. 3.3.出生時育児休業給付金申請の通勤手当の取り扱い
  4. 4.まとめ:育児休業給付金のルールを正しく理解してシステム活用で事務負担を軽減しよう

育児休業等給付金の種類と申請書類の全体像

育児休業等給付金は利用する休業制度によって主に次の3種類の申請があります。

給付金の種類

要件

主な必要書類

育児休業給付金

原則1歳未満の子を養育する育児休業を取得した場合に支給される

休業開始時賃金月額証明書、育児休業給付金支給申請書

出生時育児休業給付金

男性が子の出生後8週間以内に最大28日取得できる出生時育児休業(産後パパ育休)を取得した場合に支給される

休業開始時賃金月額証明書、出生時育児休業給付金支給申請書

出生後休業支援給付金

原則夫婦で14日以上の育児休業を取得した場合に育児休業給付金に上乗せされて支給される

休業開始時賃金月額証明書、出生後休業支援給付金支給申請書

上記のとおり、申請にはいずれの給付金も「休業開始時賃金月額証明書」が必要であり、給付金ごとに対応する「支給申請書」は利用する制度によって異なります。

なお、出生後休業支援給付金申請書は、育児休業給付金や出生時育児休業給付金の支給申請書と一体となった様式で申請します。そのため、申請する場合は育児休業給付金や出生時育児休業給付金と合わせて申請するのが一般的です。

「休業開始時賃金月額証明書」と「支給申請書」の概要と手続きの違い

前述のとおり、育児休業等給付の手続きで提出する主な書類には、「休業開始時賃金月額証明書」と「支給申請書」があります。この2つには以下のような目的の違いがあります。

項目

休業開始時賃金月額証明書

支給申請書

役割・目的

休業開始前の賃金を登録

実際の休業期間中に支払われた賃金を報告

対象となる期間

休業開始前(原則直近6ヶ月間)

各支給期間(原則2ヶ月ごと)

通勤手当の取り扱い

賃金に含まれる。数ヶ月分の定期券代をまとめて一括で支給している場合は「利用開始月」から月割りを開始して計算する

【育児休業給付金】

賃金に含まれる。ただし、育児休業中は通勤手当が発生しないのが一般的。

【出生時育児休業給付金】

定額で支給されている通勤手当は休業期間中に支払われた賃金に算入しないが、就労した日のみに対して支給された通勤手当は賃金に含めて計算する。

休業開始時賃金月額証明書の役割・目的

休業開始時賃金月額証明書は、給付金の計算基準となる「休業開始時賃金日額」をハローワークに登録するための書類です。ハローワークは原則として、休業開始前6ヶ月間の賃金支払状況や支払基礎日数をもとに休業開始時賃金日額を算出します。

育児休業給付金(出生時育児休業給付金)は、休業開始時賃金日額に支給日数と給付率(67%など)を乗じることで支給額が決まります。

証明書出典:厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続

支給申請書の役割・目的

支給申請書は、各給付金の支給申請をするための書類で、休業期間や就業日数、休業期間中に会社から支払われた賃金額などを記載します。

休業期間中に会社から支払われた賃金額が休業開始時賃金日額×休業日数の13%(給付率が67%の場合)を超えると給付金が減額され、80%以上になると不支給となる仕組みであるため、賃金額の正確な報告が必要です。

なお、育児休業中に賃金支払いが発生しない場合は、賃金額を「0円」と記載して申請します。一方で、出生時育児休業を取得している従業員が一時的に就労した場合は、賃金額を記載する必要があります。


【育児休業給付金支給申請書】

申請書1出典:厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続


【出生時育児休業給付金申請】

申請書2出典:厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続

書類別の通勤手当の取り扱い

通勤手当の取り扱いについては書類によって異なります。ここでは、「休業開始時賃金月額証明書」「育児休業給付金申請書」「出生時育児休業給付金申請書」の3つの取り扱いについて解説します。

休業開始時賃金月額証明書の通勤手当の取り扱い

休業開始時賃金月額証明書に記載する賃金には、原則として通勤手当が含まれます。また、数ヶ月分の定期券代をまとめて一括で支給している場合は、利用開始月から月割りを開始して計算します。

例えば、4月~9月分の定期代50,000円を3月に支給した場合、月割りをすると「50,000円÷6ヶ月= 8,333円(端数2円)」になります。それを利用開始月(4月)から月割りを開始し、端数は月割りした最終月に含めます。

書類名

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月

休業開始時賃金月額証明書

0円

8,333円

8,333円

8,333円

8,333円

8,333円

8,335円

参考:愛知ハローワーク「令和7年度雇用保険事務担当者研修会

育児休業給付金支給申請書の通勤手当の取り扱い

育児休業給付金の申請手続きは、育児休業終了まで(最長で子どもが2歳になるまで)、原則として2ヶ月に1回、「育児休業給付金支給申請書」をハローワークへ提出して行います。

育児休業給付金支給申請書についても、原則として通勤手当が賃金に含まれますが、申請書に賃金を記入するのは、育児休業中に基本給や通勤手当などが支払われた場合です。

なお、会社の規定にもよりますが、育児休業中は通勤が発生しないため通勤手当を支給するケースはほとんどありません。やむを得ない事情で一時的に出勤した場合など、育児休業中に通勤手当を支払った場合にのみ、賃金額に含めて申請するのが一般的です。

出生時育児休業給付金申請の通勤手当の取り扱い

出生時育児休業(産後パパ育休)は、労使協定を締結している場合は休業期間中の一定の就労が認められています。

もし、出生時育児休業中に就労した場合は、就労した日や時間に対して支払われた賃金の申告が必要になります。ただし、通勤手当の取り扱いについては「就労した日数・時間にかかわらず一定額が支払われている通勤手当」か「就労した日のみに対して支給された通勤手当」かによって扱いが異なります。

参考:愛知ハローワーク「令和7年度雇用保険事務担当者研修会

① 就労した日数・時間にかかわらず一定額が支払われている通勤手当

支給申請書には、就労した日の賃金や出生時育児休業期間に支払われた賃金を記載しますが、通勤手当・家族手当・資格手当などのように、就労した日数・時間にかかわらず一定額が支払われているものは、「休業期間を対象として支払われた賃金」には含めません。

つまり、毎月定額で支給されている通勤手当(定期代を含む)は、休業中に支払われていたとしても支給申請書の「休業期間中に支払われた賃金」には含めず算出するのが原則です。

また、給与の支払いが完全月給制(欠勤等による減額を行わず毎月満額支払われる給与形態)であり、出生時育児休業期間分の賃金が減額されなかった場合でも通勤手当が一律定額であるときは「休業期間中に支払われた賃金額」に含めません。

出典:厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続

② 就労した日のみに対して支給された通勤手当

一方で、就労した日のみに対して支給された通勤手当は、就労した日数・時間にかかわらず一定額が支払われているものではないため、賃金に含めて算出します。

そのため、完全月給制などで賃金が減額されなかった場合でも、就労した日にのみ支給される通勤手当については、①の場合とは異なり「支払われた賃金額」に算入したうえで計算することになります。

出典:厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続

まとめ:育児休業給付金のルールを正しく理解してシステム活用で事務負担を軽減しよう

育児休業等の手続きでは、書類によって通勤手当の取り扱いが異なります。

休業開始時賃金月額証明書には原則として通勤手当を含めて記載し、数ヶ月分の定期券代を一括支給している場合は「利用開始月」を起点に月割りして計算します。

一方、育児休業給付金支給申請書については、育児休業中に通勤手当が発生した場合のみ賃金額に含めます。また、出生時育児休業給付金支給申請書は定額支給の通勤手当は賃金に含めませんが、就労日のみ支払われる通勤手当は賃金に含めなければなりません。

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監修者:社会保険労務士 北 光太郎 氏
監修者:社会保険労務士 北 光太郎 氏
きた社労士事務所 代表 https://kita-kotaro.com/ 大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士資格を取得し、不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善などさまざまな取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。読者に分かりやすく信頼できる情報を伝えるとともに、Webメディアの専門性と信頼性向上を支援している。