育児時短就業給付金の通勤手当のルールとは?書類別の月割り・精算の計算方法を解説

育児時短就業給付金の手続きで、「通勤手当はどう扱えばよいのか」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。育児時短就業給付金は、育児休業給付金と異なり時短勤務中も従業員が実際に通勤しているため、通勤手当が毎月の給付額に直接影響します。
本記事では、育児時短就業給付金における通勤手当の取り扱いについて詳しく解説します。
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育児時短就業給付金とは?
育児時短就業給付金とは、2025年4月に創設された雇用保険の給付金です。2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して就業している従業員に対して、時短勤務前と比べて賃金が低下した場合に支給されます。
支給額は、支給対象月に「支払われた賃金額」と時短前6ヶ月の賃金から算出した「賃金月額」を比較して決まります。
具体的な支給額は以下のとおりです。
賃金率(支払われた賃金額 ÷ 賃金月額) | 支給額 |
|---|---|
90%以下 | 支払われた賃金額 × 10% |
90%超〜100%未満 | 支払われた賃金額 × 調整後の支給率 |
100%以上 | 支給されない |
支給対象月に支払われた賃金額には通勤手当が含まれる
育児時短就業給付金を申請する際に記載が必要な「支給対象月に支払われた賃金額」には、通勤手当を含めなければなりません。これは、雇用保険法において「事業主が労働の対償として労働者に支払うものは、名称のいかんを問わずすべて賃金として扱う」と定義されているためです。
通勤手当は、会社の就業規則や賃金規程に基づいて定期的に支給されるものであり、労働の対償(雇用保険上の賃金)に該当します。
一方、出張旅費といった実費弁償的なものは賃金に含まれません。これらの費用は労働の対価として支払われるものではなく、業務遂行のために労働者が実際に支出した費用を事後的に補填する性質のものとされているためです。
育児休業給付金との違い
育児休業給付金の場合は休業中に通勤が発生しないため、通勤手当を支払うケースはほとんどありません。
一方、育児時短就業給付金は、時短勤務中の従業員が毎日出社しているため、通勤手当が毎月の賃金額に含まれることになります。
支給額は原則として「支払われた賃金額 × 10%」で計算されるため、通勤手当の計上額が変われば給付額も変わります。賃金額が時短勤務前の賃金の90%を超えるかどうかの判定にも影響するため、通勤手当を正しく計算しなければ給付金の額も正しく算出できないことになります。
所定労働時間短縮開始時賃金証明書と育児時短就業給付金支給申請書の役割の違い
育児時短就業給付金の申請には、主に「所定労働時間短縮開始時賃金証明書」と「育児時短就業給付金支給申請書」が必要になります。
それぞれの役割や通勤手当の取り扱いは以下のように異なります。
項目 | 所定労働時間短縮開始時賃金証明書 | 支給申請書 |
|---|---|---|
役割 | 時短開始前の賃金月額(基準額)の登録 | 各支給対象月の賃金額の届出 |
対象期間 | 時短開始前の直近6ヶ月 | 各支給対象月 |
提出頻度 | 原則1回のみ | 原則2ヶ月ごと |
月割りの起算月 | 定期券の対象期間の開始月 | 実際に賃金が支払われた月 |
所定労働時間短縮開始時賃金証明書の役割
所定労働時間短縮開始時賃金証明書は、育児休業給付金や出生時育児休業給付金を申請する際に使用する休業開始時賃金証明書と同一の様式です。
育児時短就業給付金の申請にあたっては、原則として時短開始日の直前の賃金締切日から遡り、時短勤務前の賃金の支払状況をハローワークに登録するために提出します。提出は初回の1回のみで、記入方法は離職票に準じます。
なお、育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き同一の子について育児時短就業を開始した場合は、すでに時短前の賃金が登録されているため提出は不要です。育児休業給付金の時に登録した休業開始時賃金日額がそのまま引き継がれます。
実務上は、育児休業から復帰してそのまま時短勤務に移行するケースが多く、その場合は時短勤務開始時の書類提出が不要となることが一般的です。しかし、育児目的で時短勤務を開始する従業員については、原則通り時短勤務開始時に「所定労働時間短縮開始時賃金証明書」の提出が必要となります。
出典:厚生労働省「育児時短就業給付の内容と支給申請手続」
内部リンク:「離職票へ記載する通勤手当の計算方法とは?月割りと端数処理のポイント」
育児時短就業給付金支給申請書の役割
育児時短就業給付金支給申請書は、各支給対象月の実際の賃金支払実績をハローワークへ報告し、支給される給付金額を確定させるための書類です。
時短勤務中に支給された賃金額を育児時短就業給付金支給申請書に記載して申請する必要があります。手続きは原則として2ヶ月に1回、ハローワークへ提出します。
出典:厚生労働省「育児時短就業給付の内容と支給申請手続」
「所定労働時間短縮開始時賃金証明書」と「育児時短就業給付金支給申請書」の月割りルールの違い
通勤手当(定期代)を数ヶ月分まとめて支給した場合、どの月から月割り計算を開始するかは、作成する書類によって変わります。書類ごとの違いは以下のとおりです。
- 所定労働時間短縮開始時賃金証明書:定期券の利用開始月から月割りを開始
- 育児時短就業給付金支給申請書:実際の支払月から月割りを開始
例えば、4月~9月分の定期代100,000円を3月に支給した場合、月割りをすると「100,000円÷6ヶ月= 16,666円(端数4円)」になります。それを各月に計上する場合は以下のとおり計上月が異なります。
書類名 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 |
所定労働時間短縮開始時賃金証明書 | 0円 | 16,666円 | 16,666円 | 16,666円 | 16,666円 | 16,666円 | 16,670円 |
育児時短就業給付金支給申請書 | 16,666円 | 16,666円 | 16,666円 | 16,666円 | 16,666円 | 16,670円 | 0円 |
所定労働時間短縮開始時賃金証明書は、通勤手当を3月に支払った場合であっても、定期券の「利用開始月」である4月分から月割りを始めます。端数の4円は対象期間の最終月である9月に加算します。
一方で、育児時短就業給付金支給申請書は実際に通勤手当が「支払月」を月割りの開始月として6ヶ月分を割り振ります。そのため、端数が加算されるのは支払月から数えて6ヶ月目にあたる8月です。
このように、同じ定期代6ヶ月分の支給であっても、どちらの書類に記載するかによって計上する月が異なる点に注意しましょう。
育児時短就業給付金の申請で通勤手当の精算(払い戻し)が発生した場合
通勤経路の変更で定期券を途中で払い戻すケースでも考え方は書類ごとに異なります。
ここでは、4月から9月までの6ヶ月分の定期代100,000円分の通勤手当を3月に支給し、7月末に定期券を解約して25,000円の払い戻しを受けた事例をもとに、通勤手当の月割り計算の違いを解説します。
なお、育児時短就業給付金の通勤手当の処理は、高年齢雇用継続給付金や育児休業給付金などの書類作成時と同様、雇用保険関連の給付金申請における取扱いに準じます。
内部リンク:「高年齢雇用継続給付金手続きの通勤手当のルールとは?月割り・精算の計算方法を解説」
内部リンク:「育児休業給付金の通勤手当のルールとは?月割りの方法と支給申請書ごとの違いを解説」
所定労働時間短縮開始時賃金証明書の払い戻し計上
所定労働時間短縮開始時賃金証明書は、実質的に負担した額を実際に利用した月数で割り直して計上します。
- 当初の支給額(100,000円)から払い戻し額(25,000円)を引いた実質利用額(75,000円)を実際に利用した月数(6ヶ月 - 2ヶ月 = 4ヶ月)で割る
- 75,000円 ÷ 4ヶ月 = 18,750円を4月から7月に計上
項目 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 |
通勤手当 | 100,000円 | - | - | - | -25,000円 | - | - |
月割り | - | 18,750円 | 18,750円 | 18,750円 | 18,750円 | 0円 | 0円 |
参考:神奈川ハローワーク「高年齢通勤費の按分方法(払い戻し)」
育児時短就業給付金支給申請書の払い戻し計上
一方、育児時短就業給付金支給申請書は「支給対象月に支払われた賃金額」を記載するものです。そのため、当初の支給額は支払月から月割りして計上し、払い戻しが生じた月以降は精算額を月割りして合算額を計上します。具体的な計算例は以下のとおりです。
- 月割り①:100,000円(当初の通勤手当)÷6ヶ月= 16,666円(端数4円)
- 月割り②:払い戻し額(25,000円)÷2ヶ月= 12,500円
- 計上額:7月は月割り①と月割り②の合計額を計上
項目 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 |
通勤手当 | 100,000円 | - | - | - | -25,000円 | - | - |
月割り① | 16,666円 | 16,666円 | 16,666円 | 16,666円 | 16,666円 | 16,670円 | 0円 |
月割り② | - | - | - | - | -12,500円 | -12,500円 | - |
計上額 | 16,666円 | 16,666円 | 16,666円 | 16,666円 | 4,166円 | 4,170円 | 0円 |
参考:神奈川ハローワーク「高年齢通勤費の按分方法(払い戻し)」
このように、通勤手当の精算(払い戻し)があった際は申請する書類によって処理方法が異なる点に注意しましょう。
まとめ:ルールを正しく理解してシステム活用で事務負担を軽減しよう
育児時短就業給付金における通勤手当は、「所定労働時間短縮開始時賃金証明書」と「育児時短就業給付金支給申請書」とで、月割りの起算月や精算(払い戻し)が発生した際の処理方法が異なります。
担当者は書類ごとにルールを正しく理解したうえで、正確に管理しなければなりません。
しかし、月割り計算や端数処理、ダブルチェックには手間がかかり、ミスも起こりやすいのが実情です。こうした事務負担を軽減するには、通勤費精算システムの活用が有効です。
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